悠々自適な日々を目指す

波音に抱かれながら眠りにつくような生活を夢見るブログ

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【SS】七夕に夢を見る


Photo by 写真AC

トピック「七夕」について

一日遅れですが、ふと思いついたので。
この暑さで私の頭もやられちゃったかなーってちょっと思ってます←

 わたしは今、織姫以上に不幸だと思う。

 だって今日会えるんでしょ? (自業自得らしいけど)一年我慢しないといけないっていう制約はあっても、絶対に会えるんでしょ?

 わたしは違う。

 二年前に彼が海外へ転勤になると知った時、簡単に会える距離じゃなくなると悲しくなっても、健気に「また日本に戻ってくるまで待つから」なんて約束しちゃって、定期的に届くメッセージや電話で我慢していた。もちろんわたしだって、向こうの時間帯を考慮しつつも同じように連絡を取って、そのたびに本当に嬉しそうな反応をしてくれるのがたまらなく愛おしかった。

 なのに、どうしてつながりが減ったの?
 ここ半年で、明らかに電話もメッセージも減った。一時的なら何度かあったし、理由がなくても仕事が立て込んでいるのだと理解だってできる。
 でも今回は違う。ここ二ヶ月は、音信不通に近い状態だった。わたしが連絡すれば、一応「ごめん」「忙しくて」と返してはくれるけど、よそよそしい態度が見え隠れしている。

 もしかして浮気? 金髪でキレーなお姉さんにでも捕まった? あの人、人当たりがよくて爽やかな印象を持たれるから、なんだかんだで結構モテるんだよね。
 いや、彼に限ってそんなことはない、そんな人じゃないって信じてる。信じてるけど……

 考えたくない考えが四六時中頭の中で回るようにもなっちゃって、苦しくてたまらない。訊けばいいのにと相談した友達に言われたけど、できなかった。恐怖を感じている時点で「信じてる」なんてしょせんキレイ事に過ぎないと、自分で証明してしまっていたんだ。

 なんで海外にいるの。会える距離にいないの。変にごまかすような態度を取るの。なんで、なんで。

 インターホンが鳴った。思わず時計を確認すると、そろそろ夜のニュース番組が始まる時間だった。
 なんでこんな時間に……。
 無視をしようと思ったけれど、急かすようにもう一度鳴ったから仕方なくドアを開けて……息が詰まった。

「こんな時間に、ごめん。久しぶり」
 息の詰まりがまだ続いていて、声が出ない。つい今まであれこれ考えこんでいたのが嘘だと思われそうなほど、無言が続いてしまう。
「どうしても直接伝えたいことがあって、一時的に帰ってきたんだ。本当に急でごめん」
 予告もなしに帰ってきて、いきなり伝えたいことがあるってなんなの? もう頭が全然追いつかない。

「……急に連絡がなくなったから怒ってるんだよな。いろいろ準備があって、冗談じゃなく朝から晩まで忙しくなっちゃって」
 それならそうと一言言ってくれればよかった。
「あとお前をびっくりさせたくてさ、敢えて何も言わなかったんだ。でも完全に俺のわがままだから、本当にごめん」
 棒立ちのわたしを引き寄せ、いたわるようなキスをくれる。

 ――みっともなく、泣きそうになってしまった。二年ぶりの彼の温度が、感触が、わたしの中でくすぶっていた黒いもやを綺麗に吹き飛ばしてくれた。
「……さびしかった。ずっと、さびしかった……!」
「うん。でも、これからはずっと一緒にいられるよ」
 どういう、こと?
 戸惑うわたしに、彼はどこからともなく小さな箱を取り出して――

「俺と、結婚してほしい」

 

 なーんてことがあったら嬉し涙を通り越して混乱しかしなさそうだわ。っていうかそんな二次元みたいな展開、現実にあるわけないっての。
 終わらない仕事の小休憩中に疲れが頂点に達した反動か、無意識にしてしまった妄想を嘲笑で一蹴する。
「……でも、そんな妄想しちゃうってことは、求めちゃってんのかな……」
 わたしだけの彦星、ってやつを。
 ――本当に虚しくなってきたので、休憩をさっさと切り上げて仕事に戻ることにした。