悠々自適な日々を目指す

波音に抱かれながら眠りにつくような生活を夢見るブログ

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【SS】砂上の覚悟


Photo by 写真AC

 伸ばしかけた手を、懸命に堪える。

 二人のことが好きだ。
 好きだから、二人をずっと見守って、応援していくと決めた。
 ――胸に眠る想いを、醒まさないと誓った。

 人間は、本当に欲に弱い。
 時々、元から誓いなどなかったかのようにするんだ。彼女に対して作った境界線を軽々と超えて、彼に似た振る舞いをしてしまいそうになるんだ。
 彼女が自分に、どれだけ心許しているかを把握しているからこそ、反吐が出る。
 彼に、彼女に、かけた言葉はひとかけらの歪みもない、心からの賛辞であり誓いだった。それも自身で疑ってしまいそうになる。

 ――仮に。
 小さくて細い身体を包み込んでも。
 酒のせいにして、軽く唇を奪ってしまっても。
 きっと彼女は軽く叱って、終わる。再び、元の関係に戻す。笑って、名前を呼んで、時々は頼ってくれて……そんな日々へと戻していく。
 そう、何も知らないゆえの優しさと残酷さを同時に味わうだけで終わるのだ。

 認めたくない。知りたくない。
 けれど現実は無慈悲に、現状を包み隠さず突きつけてくる。「誓いなどしょせん上辺だ」とと、否定してくる。

 ――眠りから無理やり醒めてしまいそうなほどに、膨れ上がってしまった。
 いいや、眠りすらしていなかったんだ!

「……もう、勘弁してよ」
「いっそ、そっちから少し距離を置いてよ」

 ほら、また嘘をついた。
 そんな関係、自分自身が何より望んでいないくせに。

 だから今日も、そっと拳を握りしめるしかできない。
 無邪気な彼女の笑顔を、彼の信頼を、壊さず守るために。
 この手は、決して伸ばしてはいけないんだ。