【SS】こんな生活を1ヶ月ほどでいいからしたい

今週のお題「もしも100万円が手に入ったら」
※はてなブログで行われていたお題です。
せっかくなので小説風に綴ってみました。本当にただの妄想文です(ノ∀`)
なお、足りるのかどうかっていう細かい部分は敢えて考えずに書き殴りました←
波の音が耳をくすぐった気がして、目蓋がゆっくり持ち上がる。
いつもの調子でベッドサイドにあるはずの目覚まし時計を探してしまい、我に返る。
――そんな必要、もうないんだった。
身体を起こし顔を向けた先では、濃紺のベールに覆われていた空が夜明けを迎えようとしているところだった。
昨日は雲が目立ったけれど、今日は快晴のようだ。
寝室から抜け出し、波打ち際まで足を進める。砂の感触は何度味わっても無駄に歩きたくなる感触だ。頬を撫でる風はとても優しく、こちらへ寄せては引く波も子守唄のような安堵感を与えてくれる。
夜明けは、夕暮れととても似ていると知ったのはこの生活を始めてからだ。
少しずつ、空が塗り替えられていく。水面に光が灯っていく。
再び眠りについてしまいたい誘惑を懸命に押し戻して、部屋へと戻る。
気づけば早起きも苦にならなくなった。朝、海の調子を眺めるのが日課になったこともあって、むしろ楽しい。
今日の朝食はパンを焼いて、そうだ、スクランブルエッグも作ろう。ホテルの献立風味にしてみるのも悪くない。
午前中よりも、少しだけ風が強く感じる。そのせいだろうか、海から届く音は少しだけ強さが増した。その変化も耳を楽しませてくれて、思わず唇がほころぶ。
生の波音に癒やされながら読書を楽しむ……なんて贅沢な時間の使い方だろう。
周りには何もない。買い物をするにも、車で一時間はかけないと辿りつけない。それでも私は十分に満たされている。何ものにも、この非日常をこわされたくないと願っている。
日差しをまっすぐに浴びながら、水平線をただ見つめる。
太陽が、少しずつ海の底へと吸い込まれていく。肌に感じる熱も、輝きも、弱くなっていく。空が再びベールに覆われ始めて、平穏だけだった海に恐怖も感じるようになっていく。
――この瞬間が、好きだ。毎日少しずつ違う顔を見せてくれるのも、たまらない。
そうだ、今日は雲がなかったから、星空を眺めながらの夕飯にしよう。天然のプラネタリウムなんて、滅多に経験できない贅沢だ。
献立を考えながら家へと戻る。せっかくだからカメラも引っ張りだして、一度チャレンジして失敗してしまった写真撮影も頑張ってみようと、ますます心を踊らせた。
そして明日は何をしよう、なんて考えずにただ眠りにつくのです……。
いいなぁ、こんな生活してみたい。。